K君
元気ですか。
今年の夏は暑いですね。
君は外での測量の仕事が多いはずだから、体にこたえるでしょう。
大きな体で汗をかきかき仕事に精を出している君を想像しています。
さて、今日のメールは釣りのことでも、長渕剛が僕らを再会させてくれたあの桜島の奇跡のことでもありません。
19年ほど前に君からもらった2匹の猫、白と茶色のぶちと黒猫についてのメールです。
ほら、僕らがバスにのめりこんで、野尻湖のNBCの大会に通っていた頃に、君からもらったあの猫たちです。
白と茶色のぶちはサブ、黒猫はジョージと名付けてかわいがりました。
ジョージは高千穂のアパートの2階の窓から屋根に出てしまい、パニックを起こして走って行ってしまいました。
数時間後、アパートの床下で近所のボス猫とにらみ合っているところを見つけ、大好きな缶詰を缶切りで叩いて名前を呼びましたが、ボス猫に追われて走り去ってしまいました。
それが彼を見た最後となりました。
君からもらいうけてから4年ほど後のことです。
残ったサブは、一年遅れで一緒に暮らし始めた茶色の野良(エバ)と仲良く暮らしてきました。
途中数年間は妻の実家で預かってもらっていましたがそれ以外は僕ら夫婦とずっと一緒でした。
ところがここ最近急激に元気をなくし、去勢手術以来18年ぶりに医者に連れて行ったところ、腎臓障害で尿毒が全身に回っていてもう長くないと言われました。
そしてさえぎる間もなくその若い医者はこう続けたのです。
「余命は半年かもしれないし、一か月かもしれないし・・」と。
予期せぬ余命宣告を受けて妻はその場で泣き崩れてしまいました。
僕自身も泣きたい気持ちでしたが、やはりそこはこらえねばならないでしょう。
両足と心を踏ん張ってなんとかこらえました。
さて、サブの生涯が終りに近づいているということなので、
ここ数日、彼の一生について振り返ることが多いのですが、
余すところなく知っているつもりだった彼の人生の唯一、
僕のもとへやってくる前のことを知らないことに気付きました。
妻に聞かれました。
「もらったのは夏だった? 冬だった?」
「生まれて何ヶ月くらいの時にもらったの?」
答えられませんでした。
記憶がおぼろげでわからないのです。
K君、君からサブをもらいうけたのは、正確にはいつ頃だったでしょうか。
たしか、僕がシーバスを初めて釣って喜んでいた頃だったかな。
だとしたら秋なのですが・・
また、生後何ヶ月くらいのあの子をもらいうけたのだったでしょうか。
もしも君の記憶にあるなら、彼のことを覚えている限り教えてください。
返事は急がなくていいです。
暑さはもうしばらく続きそうです。
ご自愛ください。
西
※さっきK君へ送ったメールを、サブとの思い出の一つとしてここにも置いておこうと思いました。